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●楼国について
楼国(レイトエルメシア)はロウレアス大陸の南端に位置して、気候は北辺が温帯、多くが亜熱帯で湿潤な、東西に伸びた国です。隣国レイドベック公国との間には海とも見紛うような大河が流れ、土地の起伏は少なく、平原湿地帯と密林を多く国土としています。
大陸中央と大河で交通が阻まれていたため、大河より南方では北方と異なる独自の文化が育ちました。大陸北方で家を建てるならば石造りが基本ですが、南方では木で建てる……と言うようにです。大陸北方の文化が石と鉄と毛皮・毛織物であるならば、南方の文化は木と紙と綿・麻と言えるでしょう。
一部の港で他国との交流が行われてきましたが、楼国全体には広がらず、まだまだ文化の差、また文明の差は大きく開いています。●楼国の成り立ち
大陸北方の国は概ね強力な専制君主を持つか、立憲君主制ですが、大陸南方は政治形態も異なっています。楼国は北方諸国からは一国として扱われていますが、その実体は小国多数の連邦国家です。小国(郷)同士相争った戦国の時代を経て、楼国南部(現在「麗都」と呼ばれる地)の郷主が中心となって各郷を取り纏めて同盟を組み、それで楼国には長い太平の世が訪れました。
その後は一郷より一名の「君主」と呼ばれる代表者が麗都に集い、君主の合議と採決によって楼国全体の政治は行われています。
君主は郷によって多少の差はあるものの、多くは郷の民の木簡投票(選挙)にて選ばれます。しかし多くの郷では、結局その郷の最も有力な侍大将、あるいは侍大将の推薦した者に票が集まります。これは侍が伝統的に土地と民を守って戦う役目を負っており、郷内を取り締まる警察であり、郷内の政治を行う事実上の支配階級であり、郷の者に信頼されているためです。
郷は大小規模も経済状態も様々で、また接している土地などによって抱えている問題も異なります。西方から南方の海に面した郷では、最近は浪人(郷に属さない侍)を雇った海賊の被害に悩まされています。
楼国は地形のせいもあって大陸中央部以北と交流が途絶えがちで、近年ようやく交流を盛んにして北方の文化を取り込もうという流れになっています。特に遅れがちである蒸気機関についても、他国より蒸気船や蒸気機関車を輸入するなどして研究が行われています。●楼国の民俗
楼国は夏が暑く、冬でも温暖です。雨も多く、湿気の多い気候となっています。そのためか、人々の着ている服は北方のきっちりと縫製した服と異なり、風通しの良いものが多くなっています。(現実世界で言うところの和服、着物です)平民は、下穿きの上にそれを一枚羽織るだけという簡易な服装が多くなります。侍は小袖の上に袴をつけるという慣わしです。材質は多くが麻と綿、一部が絹となります。東辺の一部地方には、また異なる衣装文化(現実世界で言う中華風です)が存在します。
食事は楼国全域で米を主食にし、副食は全域で野菜、茸類、豆類、海に面する土地では魚介類を主に食します。海から離れた地方では、獣肉も食します。食事には木製の二本箸を用い、食器は焼き物か木製の椀や皿です。
建物は城砦でなければほとんどは木製の平屋で、高くても二階建て程度です。風通しの良い造りで、暑い夏を過ごし易く造られています。神は何処にでも御座すという考えの下、神を祀る場所(神社)は多くありません。人の口にのぼるほどに壮絶な死を迎えた者がいた場合、その果てた場所に祀るための社を建てる習慣はありますが、楼国全体で通じるような系統立った神話と一斉に行われる特定の祭祀は存在していません。様々な祭りはありますが、時期も作法も土地々々で異なります。
楼国では人が死んだら神になるとされていますが、神になる前の段階で、霊という状態があると考えている人もいます。期間がどれだけだかは不明ですが、強い怨みや心残りなどを持って死んだ者がその姿を幻のように残すと考えられています。霊は生前の記憶があり、怨み等があれば人に祟るとも言われています。しかし記憶が曖昧になるほど時間が経つと、その形は崩れて荒魂となります。荒魂は天災をもたらすことがあるとされていますが、荒魂となれば神として扱われます。
八海郷辺りでは神を祀るのは歳をとった侍の役目で、正月や夏に荒魂を剣神にて降ろし祀って荒ぶる力を抑え和魂に変えるとされています。
人にあらぬものには、人の形をした霊、形なき荒魂の他、時に災いをもたらすという妖怪があります。しかし侍と共にあって疑うべくのない神魂に比べ、妖怪変化は風説でしかないとして信じていない者も多く、実際に真実ではない話も多いようです。反面確かにいる、見たことがあると言う者もいて、妖怪の存在は謎に包まれています。●侍学府とは
侍学府とは、楼国西北部に位置する八海郷の若き侍大将、八ヶ門正賀長之助(やつがかど まさよしちょうのすけ)が自城を開いて作った学問所につけられた名です。
侍学府は太平の世を経て弱体化した侍の強化育成を旨とし、同じく特殊な力を持つフューリアを強化育成することに成功した北方のレヴァンティアース帝国学園都市アルメイスをモデルにして開府したとされています。
侍学府の主な生徒は侍の若き子弟です。基本的に13歳から18歳までの男女(※)の若侍を楼国全域に呼びかけ、集められました。開府されたばかりで、まだ呼びかけに応え集まった数は多くありません。
侍学府は文武両道を信条とし、その課程は講義と実践に近い鍛錬によって構成されています。講義は八海城内にて行われ、鍛錬は城の北の布達岳山中・また時には東の平野部にて行われています。
侍学府の講義及び鍛錬は講師数生徒数が少ないため、現在は年齢に関わらず同一の課程が用いられています。今後年齢によって、初等、中等、高等、研究課程に分けられ、受け入れの年齢幅が広がる予定とされていますが、それがいつになるかは未定です。※ 侍には女子も存在しています。女侍、地方によっては巫女と呼ばれ、能力は男性の侍と変わりありません。
侍学府の生徒たちは力や知識を磨くために、鍛錬の他に色々な場所へと出かけることがあります。困っている人々を助けることが力を磨く実践となるとして、独自に、または侍や平民たちに協力して事件の解決に参加することもあります。それらは学長であり城主である八ヶ門の殿の特命を受けるという形となります。
●侍学府の施設
侍学府は八海城内にありますが、その全域ではありません。多くの侍学府に関わる建物は、二の丸の地区に集中しています。
まずは元々ある城郭を、そのまま別の地方から来た若き侍たちの住まいと、また講義を行う場所として解放しています。生活の場と、授業を受ける場所が同じ建物の中で隣接しているものと考えてください。
城郭の隣には、新しく建てられた大きな洋館があります。こちらは渡航してきた留学生たちの住まいと、蒸気機関の研究室、講義を行う教室が中にあります。こちらでも、生活の場と授業を受ける場所が同じ建物の中で隣接しています。
交流は推奨されていますので、侍が洋館で暮らしても、留学生が城郭で暮らしても構いません。
二の丸は城郭を中心にして、洋館と面する以外の三方に、広い庭園を持っています。築山があり四季の木々が配され、池があり水が巡っています。城砦の一階の一部は、図書室になっています。ここには留学生たちが来る時に持ってきて寄付した洋書と、八海城に元々あった和書、図書室を作るに当たって貸本屋より買い入れた古本が納められています。
管理は警備役の八海城の侍が二人、それから図書室に商い物の古本を丸ごと売った貸本屋の「庄吉」と「おりん」という夫婦がしています。庄吉夫婦はここ住み本の管理や貸し出しの仕事を請負ながら、庄吉はまだ本来の貸本の商いに城下町へ出かけたり、城下町の版元から本を仕入れてきたりしています。なので庄吉は出かけていることが多く、生徒が本を借りたいと思ったら、多くの場合はおりんに話をすることになります。城郭では台所があり、食事は膳で配膳されます。洋館には厨房があり、食堂があります。このどちらかで食事を取る限りは、お金はかかりません。けれど一日の献立は城砦で和膳か、洋館の洋食(日によってフェズランド料理かレヴァンティアース料理か違います)かしか、選択肢はありません。遠出をする者は、頼んでおけば昼用の弁当を作ってもらえます。
昼食夕食は、城下町に出かけて食べるということも許されています。二の丸以外の場所は、本来の八海城の機能を残しています。政務等は本丸で行われており、三の丸には役宅、厩舎、蔵等が建ち並んでいます。
●侍学府の留学生の祖国について
また侍学府は富国強兵を掲げ、他国と交流し文明を取り入れることにも積極的であるべきとの理念の下、侍学府のモデルとしたレヴァンティアース帝国の学園都市アルメイスと、フェズランド王国の学問の塔より留学生を受け入れています。
侍学府は同時に直接の隣国であり、おそらく大陸中で最も蒸気文明の発達しているレイドベック公国にも留学生と講師を招請しましたが、こちらは招致に失敗しています。その理由には、第一にレイドベック公国とレヴァンティアース帝国の抗争の歴史があげられます。本質的に和解不能の理由で長く争ってきた両国は未だ緊張状態にあり、レヴァンティアース帝国側が先に侍学府の求めに応じたことで、レイドベック公国は態度を硬化させた模様です。
他に、レヴァンティアース帝国とフェズランド王国の間にも聖地ファンティン=イア=スヌーツを巡って近年まで戦争をしていた歴史があります。聖地ファンティン=イア=スヌーツは現在はフェズランド占領下であり、レヴァンティアース帝国において新帝の即位に伴い、両国は休戦中です。