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★侍とは
侍は、手に持つ武器に神を降ろし宿す「剣神」という能力を持った楼国特有の戦士です。剣神を行っていない時も身体能力は総じて高いですが、ひとたび剣神を行えば、伝説には一太刀で山を切り崩した者もいるという程の力を得ます。人として、個人として見たならば、諸外国にも類を見ない強靭な肉体とずば抜けた戦闘力を持った超人戦士であると言えるでしょう。
あまりにも強いために、古来より侍には侍同士でしか剣を交えてはならないという決まりがあります。そのため楼国における戦は侍同士の一騎打ちが基本であり、侍ではない者(平民)は戦場に出ることが禁じられています。侍にも平民を傷つけてはならぬという法度があり、破れば罰せられます。
侍とは血筋や世襲ではなく、剣神が行えるかどうかで決まります。商人や農民の子であっても、剣神が行えれば侍となります。侍の子であっても剣神ができない者は、侍ではなく平民となります。ただし侍の子は、ほとんどの場合は侍になります。剣神は武器に神を降ろす儀式ですが、降ろした神との意思の疎通はありません。神は家にも草にも路傍の石にも何処にでも御座すとされ、旧き先祖も亡くなった肉親も師匠も、悪党も善人もすべてが神となるとされ、降ろした神は常に同一ではないとされています。
侍は「剣神の儀」と呼ばれる神降ろしの儀式を行い、神をその武器に降ろした後、その神の力を自分の身にまで取り込む「精神集中」を行います。その後は普通に武器を振るうだけでもかなりの破壊力を持ち、その身には強力な防御力を得ます。更に集中を高めて「剣技」と呼ばれる技を用いれば、一撃で大岩を砕き大地に穴を穿つほどの強大な力を放出します。
精神集中で神の力を身に取り込んだ後には、「祈願」という文字通り神に祈ることで、その侍の得意とする現象を起こすことができます。祈願で起こせる現象は自然現象に近いものが多く、雨を降らせたり、風を起こしたりします。ただ、それは降ろした神ではなく本人の素質に由来するもののようで、起こせる現象は一人に一つだけです。またこの現象は同じ風を起こすにしても、竜巻を起こすよりは帆船を進める程度の穏やかな風を吹かせる者の方が優れているとされ、民に尊敬されるようです。
侍は剣神を行った後も、すべての行動に制限はかかりません。ただし力が何十倍にもなっていますので、基本的にその状態で人や物には触れない習慣があります。やむをえず触れる時には細心の注意を払うことになります。侍の使う武器で最も多いものは太刀ですが、剣神を行う武器は必ずしも刀である必要はありません。刃物である必要さえありません。借り物であっても大丈夫です。
しかし形状や材質には定めがありませんが、「自らの身長と同じ長さまで」「手に持つものに限る」という決まりがあります。
鎌などを鎖で繋いで手から離れぬようにした武器を用いる者、また鎖そのものを扱う者もいますが、この場合も長さは身丈までとなります。その長さの定めは、現実的な問題として剣神時の力の届く距離です。剣神の技……剣技は、侍自身の身丈よりも離れると急速に力を失ってしまうのです。
なので侍同士の戦いは最大でそれぞれの身丈を足した程度までという、狭い間合いで行われます。特に背の高い侍は長身を生かす長物を用い、特に背の低い侍は逆に間合いを狭めて戦う短物を用いる傾向があるようです。
また手から離れてしまうと、剣神の力は発揮されません。なので短筒・長筒(銃類)は楼国にも存在はしていますが、剣神を行う武器としては不適切だとされています。弾丸が銃身から離れた瞬間に剣神の力を失って普通の弾になってしまい、剣神状態の侍にはその程度では傷をつけることができないからです。銃類に対しては、剣神を行っても意味がないということなのです。同じく弓も剣神の武器には不適切です。
ただし武器の形状を変えるという剣技を用いて、わずかながら離れた場所に剣神の力を飛ばすことができる者もいます。